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澤西 章展 |
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2011.2.28(mon)−3.5(sat)
ギャラリーなつか |
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EMPTY CHAOS
- 空的混沌 -
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会場風景
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左から「Empty Chaos 10-15」 1167×910mm
「Empty Chaos 11-1」 1620×1303mm
「Empty Chaos 11-4」 910×727mm
キャンバス、油彩
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「Empty Chaos 10-8」 1620×1303mm
キャンバス、油彩
2010
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左から「Empty Chaos 11-5」 220×273mm
「Empty Chaos 10-9」 227×227mm
「Empty Chaos 11-10」 242×333mm キャンバス、油彩
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<Empty Chaos
七竅(しちきょう)を穿(うが)ちて渾沌(こんとん)死す>
そやからな、渾沌はんの好意に報いるちゅうたらこれしかあらへん思うんやけどな。そやな、渾沌のおっさん、目ぇも耳も鼻も口も無いもんな、目ぇとかの穴開けたったら、そら喜びはるで。いらん。私、中央の帝渾沌は、南海の帝(しゅく)と北海の帝忽(こつ)の二人に対して、否定の想念を送り続けていた。彼らは、私が彼らをもてなしたお礼として、器官なき私の身体に目耳鼻口の七つの穴を穿ち、感覚器官を与えてやろうと相談していた。いらんのだ。そんなもの無くとも、私は何ひとつ不自由なく暮らしているのだ。想念を通じて他者とも交流でき、世界を認識することもできる。が、彼らには何故か、私の想念がまるで通じない。渾沌はんごっつ嬉しんやな、体ふるわして喜んではる。違う違う、私は怯えているのだ。頼むからやめてくれ。どっかいこか?まずはまん中の鼻から開けたろか、後ろ押さえといてな、ほないくで。やめろばか、あ痛っきゅきゅきゅきゅ痛い痛い痛い本当に痛い、痛いからやめて。渾沌はん、か(・)だ(・)ら(・)バタバタさして喜んではるで。やっぱ嬉しいんや、よかったなあ渾ちゃん。痛い痛い臭い痛い。出来たての私の嗅覚を、世界中の臭気が襲った。次の日。今日は耳いったろか、このへんか?ここか?いくで。お願いもうやめて、がががが痛い痛いうるさいやかましい。あらゆる騒音雑音叫び罵り呪い呻き声が、私の聴覚を蹂躙した。そのようにして私は、一日一つずつ穴を開けられ、六日にして鼻耳目を得た。視覚を得た時の禍禍しさについては、もはや語る言葉を持たない。そして七日め。今日で仕舞いや、口の穴開けたる。うまいもんぎょうさん喰えるし何でも好きなこと喋れるようになるねんでえ。ごごごご痛い痛い、私は生涯最初で最後の言葉を絞り出した。「わしゃ死ぬる」あっ渾沌はん死んでますやん、あかんどないしょ。どないしょてもう死んでもうてるやん、どないもならへんがな。こんなことやろて初めにゆうたんお前やで。あほか何ゆうてんねん、初めにやったんお前やんか。まあそやけどな、渾沌はん死んだん、これ寿命やったんとちゃうか?そや、寿命や、寿命やったらしゃあないな。ほなわし、もうぼちぼち帰らしてもらうわ。わしも帰るわ、渾沌はん、悪う思わんといてな、寿命やよってにな、ほなな。彼らは去っていった。薄れゆく私の意識の中では、Frank
Zappaの「拷問は果てしなく」がいつまでも鳴り響いていた。(俺た ちが生きているのはこういう世界なんだ)
『荘子』「応帝王篇」より
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