母袋俊也展
略歴
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「Qf−SHOH 150」
≪掌≫

2005.4.11(mon)−4.30(sat)
ギャラリーなつか&b.p

ギャラリーなつか 会場風景/母袋俊也 ギャラリーなつか 会場風景/母袋俊也
ギャラリーなつか 会場風景


ギャラリーなつかb.p 会場風景/母袋俊也 ギャラリーなつかb.p 会場風景
「Quadratfull 25wc 1〜4, 6〜10, 12〜24」
透明水彩・鉛筆、ファブリアーノ紙
H24×W24cm(イメージサイズ)/H43.5×W34.5cm(紙)
2005



"M346 Qf・SHOH 150-U","M352 Quadrafull 35-U"/母袋俊也 "M348 Qf・SHOH 150-W","M353 Quadrafull 35-V",/母袋俊也
左「M352 Quadrafull 35-U」 35×35cm
右「M346 Qf・SHOH 150-U」 150×150cm
アクリル、油彩/綿布
左「M353 Quadrafull 35-V」 35×35cm
右「M348 Qf・SHOH 150-W」 150×150cm
アクリル、油彩/綿布

<出品作品リスト>
1 M345 Qf・SHOH 150-T
2 M346 Qf・SHOH 150-U
3 M347 Qf・SHOH 150-V
4 M348 Qf・SHOH 150-W
5 M349 Qf・SHOH 150-X
6 M350 Qf・SHOH 150-Y
7 M351 Quadrafull 35-T
8 M352 Quadrafull 35-U
9 M353 Quadrafull 35-V
10 M354 Quadrafull 35-W
11 M355 Quadrafull 35-X
12 M356 Quadrafull 35-Y
13 Quadratfull 25wc 1〜24


Qf・SHOH 150 ≪掌≫
回収と積合

今回は、2001年以降制作してきているQf系に限定しての発表である。だがその前にここでQfについて説明が必要だろうか。QfとはQuadrat(正方形)、full(充満)、正方形フォーマートの画面に、色彩とかたちが筆致によって充満していくという課題を負って、命名されたものである。それは従来から展開してきているTA系、即ち余白と色柱の偶数組の連結による横長フォーマートの作品群とは対極にあり、むしろ対峙的に全く異なった原理を追求する事を義務づけられ、フォーマートと精神性の相関をメインテーマに制作する私の作品群の中で、新たな系を形成しつつあるのである。その発生の背景には私自身のフォーマート探求の中でのTAの体系化、世紀の改変に際しての絵画への内省、そしてこの時期に起きた世界を揺るがしたあの出来事が大きな契機となった事に間違いはない。TAの原型は、原初的な風景にあった。何故、風景がモデルなのか(※註)の答えの一つに視覚の双方向性があった様に思う。それは聖堂内で体験するイコンから受ける視線と我々の眼差しとの運動性の様なもので、有史以来人々は地形の内側にあって、風景を見、風景に見守られていたのだと思う、そこには信仰にも似た視線の純粋性と普遍性がある。しかし時としてその関係のこわれる事がある。山古志村では、今は見上げる山は姿を変え、見るべき対象、視線のおくりとどけられていた対象を人々は喪失してしまった。その絶望の大きさは計り識れない。だが、この様な時も、いやむしろだからこそ、絵画は、絵は待たれているのである。
今回Qfがモデルとするのは風景ではなく、グレーク、定朝の掌であり、ルーブリョッフのトリアーデ、その視線の構造、集中性である。前世紀、絵画がその還元化の実践の渦中で整理してしまったアスペクトを正方形フォーマートの画面上への回収をはかり、更に積合を重ねる事で出来るキューブを私は仮想し始めている。TA系の場合の横へ移動する視線は、連続と断絶を繰り返しながらシークエンスをつくる、一方Qfでは、余白は排され全ての線は、画面をめぐりはするが外へは脱出せず画面にとどまり、視線はルーブリョッフや定朝の掌に沿って画面内を左へ右へ、そして上下へ、更に奥へあるいは手前へとキューブを型づくっていくのだ。それは幼い頃、早朝に雨戸を戸袋にたたんでいく際の徐々に厚みを増していった時の事を想起させ、その側面に重ねられた風景がしまわれていったかの様なこの妙なイメージ体験は折りたたまれた屏風の厚みと断続された複数の画像を連想させるのである。しかしQfでキューブを仮想し私が実現を目指す像は、その手前、奧の層が断絶せず絶え間なく連動する連続性であり、その集中性にある。この試みは、まだようやく始まったに過ぎない。

2005.4. 藤野にて 母袋俊也
註:「絵画のための見晴らし小屋 1999―2004」東京造形大学研究報 2005(p75)
関連文献一覧へ

<2005年展覧会 関連文献>
2005 「母袋俊也 Qf・SHOH-150<掌>」 個展カタログ(ギャラリーなつか)
2005 「Qf・SHOH-150<掌>―回収と積合 個展「母袋俊也 Qf・SHOH-150<掌>」カタログ/自筆

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