小沢智恵子展
2010.5.31(mon)−6.5(sat)
ギャラリーなつか
会場風景/小沢智恵子 "TOKI"/小沢智恵子
会場風景


「TOKI [〜]」
各25×60xm
パネル、和紙、水干絵具、水晶、方解末、岩絵具、膠
"TOKI"/小沢智恵子 "TOKI"/小沢智恵子
「TOKI V」
45×162xm
パネル、和紙、水干絵具、水晶、方解末、岩絵具、膠
「TOKI Y」
30×92xm
パネル、和紙、水干絵具、水晶、方解末、岩絵具、膠

TOKI―「和の抽象」 小沢智恵子の作品について

横に長い三つの平面に、間を空けて、湧き出し流動する雲のようなものが、黒がかった濃紺を背景に描かれている。雲のようなものは、山の間から湧き出して来た霧のようでもある。それは、小沢智恵子の内部の心象に浮かび上がった大気のうごめきの一瞬を捕らえた像であろう。このような抽象を通して、小沢は一貫として、目に捕らえられない外部の自然の流動や本質としての姿を、そして、それに感応し反応する自己の内部の感覚や情動を、描き出そうとして来た。
今回の作品も、パネルに和紙を用い、絵の具に日本固有の泥絵の具を用いていることから、日本画のように感じる。そして、三つの画面が間を置いて配置されていることから、日本の屏風や襖絵のようにも感じられ、その何も無い間の空間に、何も無いが故に、逆に私達は、描かれた雲や霧が連なって、濃密に存在するかのような意識に襲われる。そのような素材や手法によって、西洋の絵画にはない、日本の絵画の特徴として、大気の動きの神髄を捕らえているように感じる。日本画が最終的に目指すものは、自然の大気や宇宙の大気そのものを描き出すことと言うが、小沢の絵画はまさに、そのような自然の大気を、そして宇宙の大気を描き出そうと試みている。それ故、この絵に描かれている世界が、星雲のようにも見えてくる。生滅を繰り返す星の運行としての星雲の姿に。そのような意味で、とても宇宙的である。
小沢の抽象画は、西洋の抽象画が表現出来なかった世界を、ものの見事に捕らえている。一般的に、抽象画と言えば、荒々しく自己の心象世界を描いたり、自己の外部や内部を濁った色彩で描き出すの特徴としていたが、小沢の抽象画は、荒々しく流動する世界を描いていても、とても透明感溢れる澄明な世界となっている。このことも今までの抽象画にはなかった独自の世界である。
この作品には「TOKI」という題が付けられている。一時も休むことなく変化し流動し続ける自然や宇宙の在り様を、留まることのない時間というものの一瞬を、定着することによって、悠久な時間や自然の真実の姿を、小沢は描き出そうとしている。刻々と変化する悠久の自然のただ中で、私達は生きているのであり、生かされて存在している。小沢の作品は、まさに、この自然との宇宙との対話によって、成り立っている。

文章:詩人・評論家 戸谷 崗


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2010 schedule


新潟県生まれ。10代の頃、弦巻松陰に書を学ぶ。創展奨励賞受賞。英国に留学、エマーソンカレッジ彫刻科修了。モダンアート展。上野の森美術館大賞展。個展、グループ展を東京、埼玉などで毎年開催。2009年はギャラリー近江(銀座)にて個展。近年は絵画作品の他にフェルトによるインスタレーションの発表も行っている。


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