絵画は絵画を超えて
2006.5.8(mon)−5.20(sat)
ギャラリーなつか&b.p

会場風景/絵画は絵画を超えて

会場風景



皮膜2004-向日葵/片山雅史 遠い水の世界/千々岩修
片山雅史
「皮膜2004-向日葵」






千々岩修
「遠い水の世界」


量子/藤田邦統 M361-Qf・SHOH150V-op/母袋俊也
藤田邦統
「量子」
母袋俊也
「M361-Qf・SHOH150V-op」



「堅固」に、そして「柔軟」に
石川健次 
 他者をずらしてみても、やがては馬脚を露わすに相違ない。新たな動向に多少の彩りを加えたところで、しっぽをつかまれるのは時間の問題だ。拠って立つ足場を堅固に、柔軟な視野と好奇心、そして行動に支えられながら、自覚的に今を乗り超えてゆく態度こそが新たな地平を切り開く。
 日本画を学んだ千々岩修は、紙や岩絵の具、箔など伝統的な素材、技法を用いて、色彩と余白の劇的な出会いを演出する。大胆に、あるいは繊細に重層する色彩、その清澄な響きにめまいにも似た愉悦を幾度となく覚えた。だが私の目は、そうした愉悦と同様に、ひょっとするとそれ以上に、色彩と余白が奏でる旋律になおいっそう引き寄せられる。たとえば、「両洋の眼 2005」展に出品した《青みがかる》。画面のほぼ右半分を占める余白に、描かれていないはずのそこに、鳴り止むことのない音色を感じた。千々岩自身、この作品に寄せてこう書いている。「余白に向かってゆく余韻を感じながら、線と色の交わりを楽しむことができました」。私が楽しんだのも、まさにそんな「余韻」だった。
 母袋俊也はドイツ留学から帰国後、一貫して複数の支持体への関心を抱き続ける。横長、長大な画面は、絵巻や襖絵などを前にした際と似た視覚体験を私に迫る。奇数パネルに現出した中心のない空間に、ただ表層をなでるように私の視線は漂泊し続けたこともある。日本古来の絵画形式に加え、留学中に触れた祭壇画などに多く啓示を受けたと画家はかつて語った。最近はサイズも異なる複数の画面が壁面に自在なリズムを刻む作品も多い。見る側の視線を引き寄せるため、内容はもちろん、支持体などいわば器≠ヨの興味、試行錯誤を重視する。視覚芸術としての絵画を、内容や器≠ネどあらゆる要素を総動員して、画家自身の言葉を借りれば、それらの「総合化」の果てに変化をもくろむ。
 藤田邦統が具象画壇への登竜門と呼ばれた安井賞を受賞したのは、1991年。重厚な絵肌に描かれた群像に深遠な情感を塗りこめた受賞作は、櫻井孝美ら劇画調のダイナミズムが人気を集める当時の具象画に新鮮な刺激を与えた。受賞式で画家があいさつした言葉を、おぼろげに記憶している。「何を話そうかと考えていたけど、いざとなったらぱーっと忘れてしまった。絵も同じで、画面に向かうと抱いていたイメージがどこかへ消えてしまう。ホントはそのイメージを、色や形に凝縮させたいのだけど……」。時間は流れ、作品から具体的な形は薄れたように映る。だが実は今も変わらないのではないか。最近作に寄せて画家はこう書いた。「タマシイのワッカを描こうと思った。そしてムキダシの骨だけ残れば良い」。具体的な再現でなく、かといって視覚的な表現だけで自立させるつもりもない。独特の具象へ、画家は疾駆する。
 版画を出自に、片山雅史は近年、もっぱら絵画に専念する。版画と絵画の技法を併用していたころを過渡期とすれば、版画から絵画への関心の推移は比較的ゆっくりと進んだと言えるのかもしれない。推移の理由を、「フラットな感じがどうも……」とずっと以前もらしたことがある。酒席だったこともあって、そのときは聞き流してもいたが、現在の画家が向ける最大の関心をすでに暗示していたのだと今になって思う。では最大の関心とは? 最近の図録に画家はこう書いた。「造形芸術作品は見ることを前提として語られてきた」と。絵画が純化への過程を急ぐにつれ、視覚重視の勢いにも拍車がかかる。視覚以外の知覚、つまり触覚、味覚、嗅覚などを積極的に刺激、誘引することで絵画の可能性に切り込もうと画家は企てる。画面の奥底、幾重にも塗りこめられた絵肌の内奥に光を、新たな空間を抱える近作の《皮膜》シリーズは好例だ。視覚以外への関心が広がるのにあわせて、「フラット」から「幾重にも塗りこめられた絵肌」へと舞台も拡張したと言い換えてもいい。
 冒頭に書いた「拠って立つ足場」は、俗な言い方をすれば、「こだわり」と言い換えてもいいのかもしれない。伝統の素材や技法、多様な歴史への興味、独特の具象、多彩な知覚……。「堅固」に、そして「柔軟」に飛翔してゆくその先を夢想するたび、私は心躍る思いに浸る。


片山雅史 KATAYAMA Masahito 戻る
2006 schedule



1955 東京都生まれ
1984 京都市立芸術大学大学院美術研究科修了
1988 アジアン・カルチュラル・カウンシルの招聘により渡米、ニューヨークに滞在
1995 文化庁派遣芸術家在外研修員として渡英、ロンドンに滞在

【主な個展】
1987 「風のなる日のために」ギャラリー白(大阪)
1989 「風のなる日のために」ギャルリーユマニテ東京
「風のなる日のために」佐賀町エキジビット・スペース(東京)
1990 児玉画廊(大阪)
「For the Windy Day」オスカー・フライデル・ギャラリー(シカゴ、アメリカ)
1991 片山雅史の版画制作現場から ノマルエディション・エキシビットスペース(大阪)
1992 「Genealogy of the Wind」オスカー・フライデル・ギャラリー(シカゴ、アメリカ)
-Works on Paper-ノマルエディション・エキシビットスペース(大阪)
1993 児玉画廊(大阪)
1994 「風の系譜」細見画廊(東京)
「風の系譜」ギャルリーユマニテ東京
「風の系譜-'94」ギャラリーマロニエ(京都)
1995 児玉画廊(大阪)
2000 「皮膜」ギャラリー白川(京都
2003 「風のなる日のために/風の系譜 80年代後半ー90年代前半の絵画」トヨタビル3Fギャラリー(福岡)
2004 「第5回21世紀の作家?福岡 片山雅史展「皮膜2004?知覚の森へ」福岡市美館
2006 片山雅史展「風」のシリーズより 福岡市美術館

【主なグループ展】
1987 「アート・ナウ'87」兵庫県立近代美術館(神戸)
「第7回ハラ アニュアル」原美術館(東京)
1988 「アート・ナウ '88」兵庫県立近代美術館(神戸)
「ニュージャパニーズスタイルペインティング-日本画材の可能性-」山口県立美術館
1989 「版から/版へ -京都1989-」京都市美術館
1990 「アート・ナウ 関西の80年代」兵庫県立近代美術館(神戸)
1991 「マニエラの交叉点-版画と映像表現の現在-」町田市立国際版画美術館(東京)
1993 「90年代の日本-13人のアーティストの提言」民俗博物館(ローマ、イタリア)デュッセルドルフ市立美術館(ドイツ)に巡回
「明日の美術4-1993年の視点」スポレート国際芸術祭 旧サン・マッテーオ病院(スポレート、イタリア)
1994 「現代美術の展望 VOCA展'94?新しい平面の作家たち」上野の森美術館(東京)に出品
「日本 現代美術の断面」現代アートギャラリー(ソウル、韓国)
1995 「VOCA展'95 現代美術の展望?新しい平面の作家たち」上野の森美術館(東京)
1996 「日本の現代美術50人展」(ナビオ美術館、大阪)
2000 「Art Project DEJIMA2000 日蘭交流400周年記念現代絵画展」O美術館(東京)
2001 「光の記憶展」三菱地所アルティアム(福岡) ヨコハマポートサイドギャラリー(横浜)他巡回
2003 「両洋の眼」(松坂屋美術館、名古屋、他巡回)
2004 黄−地の力&空の光 目黒区美術館(東京)
2005 「両洋の眼」(三越美術館・東京他巡回)
CONVERGENCE ワークショップ及び展覧会に参加 (ホーチミン市美術館、ヴェトナム)
CITY NET ASIA2005に出品 (ソウル市美術館、韓国)
2006 The Art of Passart-Ism 丸の内ビルディング他(東京)
「<絵画>は<絵画>を超えて」ギャラリーなつか(東京)

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千々岩 修 CHIJIIWA Osamu 戻る
2006 schedule



1971 熊本県熊本市生まれ
1995 多摩美術大学美術学部絵画科日本画専攻卒業
1997 多摩美術大学大学院美術研究科修了

【個展】
1999 佐藤美術館
2001 ぎゃらりぃ朋
2002 アートスペース羅針盤
2003 GINZA TANAKA
ぎゃらりぃ朋
2004 東邦アート
2005 アートスペース羅針盤

【グループ展】
1994 東京セントラル美術館日本画大賞展 入選
1995 川端龍子賞展
1996 三渓日本画賞展 優秀賞受賞
佐藤国際文化育英財団第5回奨学生美術展 佐藤美術館
第1回東京日本画新鋭選抜展 大三島美術館
1997 第14回山種美術館賞展 出品
「絵画出発1997」 麻布工芸美術館
第1回奄美日本画大賞展 入選
1998 花と緑自然を描く展 佐藤美術館
第2回東京日本画新鋭選抜展 奨励賞受賞 大三島美術館
1999 第5回美の予感展 高島屋/日本橋、横浜、大阪、京都
「メチエの未知へ」O美術館
第1回トリエンナーレ豊橋−明日の日本画を求めて−入選
2000 両洋の眼展 日本橋三越、他
「メチエの未知へ」東京銀座画廊
2001 新世紀をひらく美展 現代日本画・洋画新鋭作家展 高島屋/日本橋、横浜、大阪、京都
第3回東京日本画新鋭選抜展 大三島美術館
「メチエの未知へ」 アートスペース羅針盤
2002 10周年記念美術展 佐藤美術館
歴展 銀座プリミエール
第2回トリエンナーレ豊橋―星野眞吾賞展― 入選
2003 両洋の眼展 日本橋三越、他
第12回奨学生美術展 招待作家 佐藤美術館
歴展 GINZA TANAKA
2004 自然の情景 平野美術館
2005 新世紀の顔・貌・KAO−30人の自画像−2005」ギャラリーアンファン他
「CONTEMPORARY ART―色彩の饗宴―」井上画廊
両洋の眼 日本橋三越、他
VOCA展 上野の森美術館
2006 両洋の眼 日本橋三越、他
「絵画」は「絵画」を超えて ギャラリーなつか

【パブリックコレクション】
平野美術館・佐藤美術館・大三島美術館

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藤田邦統 FUJITA Kunitsugu 戻る
2006 schedule



1964 福島県生まれ
1986 和光大学人文学部芸術学科卒業
1987 和光大学専攻科芸術学専攻修了
1990 文化庁国内研修員
現在  新制作協会会員 日本美術家連盟会員

【主な個展】
1992 ギャラリー17/東京
1994 ギャラリー銀座汲美/東京
1995 紀ノ国屋画廊/東京
1996 ギャラリー銀座汲美/東京('97〜’99)
2005 「Note」ギャラリー銀座汲美/東京
「藤田邦統のDrawing」展 NICHEギャラリー/東京

【主なグループ展】
1986 新制作展 東京都美術館/東京(’87〜’90,’92〜’05)
裸婦大賞展 東京セントラル美術館/東京、亀谷美術館/三重
1989 絵画大賞展 上野の森美術館/東京
1990 絵画大賞展受賞作家展 吉井画廊/東京、パリ
次代を担う作家展 彫刻の森美術館/神奈川
1991 安井賞展 西武美術館/東京
1993 現代の視覚展 有楽町アートフォーラム/東京、笠間日動美術館/茨城
Ima 絵画の今日展 三越美術館/東京('95,’97)
遊歩者展 乃木坂アートフォーラム/東京
1994 明日への絵画展 上野の森美術館/東京
1995 VOCA展 上野の森美術館/東京('98)
1997 福島の新世代展 福島県立美術館/福島
1999 Nicaf国際コンテンポラリーアートフェア国際フォーラム/東京('03)
2000 「春の嵐」展 NICHEギャラリー/東京
2001 「和紙による表現」展 みゆき画廊/東京
2002 「安井賞40年の軌跡」展 つくば美術館/茨城、他
「紙・様々な表現」展 みゆき画廊/東京
2003 「木・様々な表現」展 みゆき画廊/東京
「雷鳴の轟」展 NICHEギャラリー/東京
2004 「不定形による表現」展 みゆき画廊/東京
「NICHE・SPRIT」展 NICHEギャラリー/東京
福島現代美術ビエンナーレ 福島県文化センター/福島
2005 両洋の眼展 日本橋三越本店/東京、他
「三角を考える」展 みゆき画廊/東京
2006 「絵画」は「絵画」を超えて ギャラリーなつか/東京

【パブリックコレクション】
横浜美術館
上野の森美術館
箱根彫刻の森美術館
三鷹市美術館
東京女子医科大学
兼松

【主な受賞】
安井賞展安井賞
新制作展新作家賞
絵画大賞展特別優秀賞
福島県美術賞

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母袋俊也 MOTAI Toshiya 戻る
2006 schedule



1954 長野県生まれ
1978 武蔵野美術大学造形学部油絵学科版画コース卒業
1983〜87 武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻版画コース修了
1999〜 野外作品「絵画のための見晴らし小屋」制作展開
2000〜 東京造形大学教授
2001〜 Qf(正方形フォーマート)系の展

【個展】
1979 真和画廊/東京(‘80)
1981 シロタ画廊/東京
1984 ギャラリーヴィレムス/フランクフルト
1985 シュテーデルシューレ/フランクフルト
ギャラリーヴィーセンマイヤー/ヴァイルブルク
1987 ボン文化センター/ボン
ギャラリープルマン/フランクフルト
JALギャラリー/フランクフルト
1990 「母袋俊也 絵画・水彩」ストライプハウス美術館/東京
1991 「オマージュ1906 水彩」aptギャラリー/東京
「平面・余白・モダニズム」ギャラリーαM/東京
1992 「from Figure」aptギャラリー/東京
「素描1001葉のf・zより」ギャラリーTAGA/東京
「リトグラフ−Le Ballet」ギャラリー福山/東京
1993 「paper-foldscreen―開かれる翼―」ギャラリエアンドウ/東京
「Koiga−Kubo」ギャラリーなつか/東京
1994 from Figure」ギャラリーTAGA/東京
「from Plant」aptギャラリー/東京
ギャラリエアンドウ/東京
1995 「Hossawa」ギャラリーなつか/東京
「Waage・TA」かわさきIBM市民文化ギャラリー/神奈川
1996 「Wien」ギャラリーTAGA/東京
「StephanU」ギャラリエアンドウ/東京
「TAAT−NA・KA・OH」ギャラリーなつか/東京
1997 「TAaT」ガレリアラセン/東京
「TAa/Nakaoh」ギャラリー ル・デコ/東京
「Printworks」ギャラリエアンドウ/東京
「TAaT」ギャラリーYou/京都
1998 「NA・KA・OHU」ギャラリーTAGA/東京
「MOTAI Gemalde・Papierarbeiten」ライン・ルーア・クンストアカデミー/エッセン
1999 「ta・KK・ei−TA・ENTJI」ギャラリーなつか/東京p.d.
「ドローイングインスタレーションta・KK・ei」ギャラリエアンドウ/東京
2000 「ARTH・UR・S・SE・ATAR」ギャラリーTAGA/東京
「Project 絵画のための見晴らし小屋」ギャラリー毛利/東京
2001 「TA・MA UNOU HI」エキジビション・スペース/東京
「magino・fujino」ギャラリーなつか/東京
「Quadrat/full」ギャラリエアンドウ/東京
2003 「TA・SHOH−Qf・SHOH《掌》」ギャラリーなつか/東京
2004 「絵画−見晴らし小屋TSUMAALI」アートフロントギャラリー/東京
2005 「Qf・SHOH150《掌》」ギャラリーなつか/東京
「《Qf》その源泉」エキジビション・スペース/東京

【グループ展(1999年以降)】
1999 「第2回Fujino国際アートシンポジウム'99」藤野/神奈川
「SSA・アニュアル展」ロイヤル スコティッシュ アカデミー/エジンバラ・スコットランド
「Artisits+Itazu Litho-Grafik展」文房堂ギャラリー/東京
2000 「トルコ支援 日本現代美術展-こころのパン-」デルメンデレ芸術の家/デルメンデレ・トルコ
2002 「こころのパン2002 絵画・彫刻」イズミット市立美術館他5都市巡回/トルコ
2003 「中川久・母袋俊也」かわさきIBM市民文化ギャラリー/神奈川
「第2回大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2003」新潟
「代官山アートフェア」ヒルサイドフォーラム/東京
2005 「郷土ゆかりの作家たちU」新見市美術館/岡山
2006 「第3回大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2006」新潟
「<絵画>は<絵画>を超えて」ギャラリーなつか/東京
2007年母袋俊也展はこちら

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