佐々木泰樹展
2009.4.6(mon)−4.11(sat)
ギャラリーなつか

- Excuse contemporaristic -
どうしたわけか、はじめから立ち位置の難しい人間でした。自分では素直な気持ちからやっていることが、常に奇妙なズレを生んでしまう。今回もそうです。会場はコンテンポラリー・アートの名門画廊。しかし、「自然光が入る大きな窓があり、窓外に街路が見おろせる」、つまり、自分がふだん絵を描いている状況に近い場所で展示がしたい、そうした理由から、今回この場をお借りすることとなりました。
作品は基本的に、30号Fのパネルを縦位置で2枚つないだサイズ。なぜ2枚組にするのか。F判P判という定型から逃れたいこと、画面中央の切れ目が快い緊張感をつくり出すこと、何より屏風という形式に対する憧れからそうしているのです。
描く主題は風景。画材は麻紙に膠絵具。しかし、日本画の風景画とはおそらくとても呼べません。ある自然の大きな景に抱かれた時の驚き、その内的衝撃を、粒子の目に見える膠絵具で描いてみたい。そこから生まれてきた絵たちの中から、今回は9点を展示しています。
「素晴らしいじゃないか、海みたいに素敵だと思っているんだ。」と、言葉をかけたら相手は海を知っていた。「海みたいに美しいんだって?僕はこっちの方が大洋より綺麗だと思うよ、人が住んでいるからね。」僕はこの兵士の眼の方を選ぶよ。(ゴッホ:ベルナールあて書簡第10信)
今からおよそ120年前の5月、南仏ラ・クローの野を眼前にしたヴァンサン=ヴァン・ゴッホは、たまたま出くわしたアルル駐屯の青年将校・ミリエ少尉の言葉に、強い感動を覚えたのです。「人が住んでいるからね。」――長い長い年月を人がそこで暮らしてきた風光に、自分もまた愛着を感じていることに気づきました。時には人里離れた山頂にも登りますし、人家の見当たらない断崖絶壁の岬にも立ちます。しかし、ミリエとヴァンサンの眼をいつでも忘れずにいたい。
今回の個展の初日は私淑するK師の、最終日はわが母の命日にあたっています。これは偶然でもあり、また必然でもあったのでしょう。ご多忙の折りのご高覧、心より感謝申し上げる次第です。
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